STORY
江戸後期、黒船が泰平の眠りを覚ます少し前————。
お栄は鬼才の絵師・葛飾北斎を父に持ち、物心つく前から絵筆を握ってきた。
幼い頃から北斎工房の一員として、男の弟子たちにも引けを取らずに、代作もこなし枕絵も描いてきた。けれど本物の絵師になりたいと肝を据えたとき痛感する。北斎の影から逃れ、自らの絵を掴むには、女である自分を受け入れ、見つめなくてはならないと。
折しも出島からシーボルト一行がやってきて北斎工房に大量の絵を発注する。
百枚の肉筆画を西洋の画法で描くようにと。
絵師たちに新たな風が吹きつける。お栄は、自らの光と闇を見出そうと挑んでいく……。
北斎の異才を受け継ぎ、のちに『夜桜美人図』『吉原格子先之図』を描き出すお栄(応為)、その青春期の物語。